おれ的わたし的2012ベスト

■お名前
石黒亮
twitter web

■2012年にリリースされた音楽で、良かったものベスト10

……って2012年にリリースされたアルバムなんて10枚くらいしか買ってないわ……ということで、2012年に「インパクト大きかった録音」というベス トにしました。 1. Nat King Cole /Love Is the Thing 誰もが知ってるような超有名盤ですが、こういうものに限って逆に聴いてない、というのが僕ら世代以降の古典との触れ方であり、僕もそのうちの一人だったわ けです。 ある日「“い い音”を聴こう!でお世話になっているA&M社にお邪魔した時、「現在開発中のスピーカー」があるというので試聴室で音を聴かせてもらっ たんですが、この密閉式のフルレンジスピーカーがすこぶる良く、未完成と言いながらとんでもなく素晴らしい音で感動しました。 で、この時何枚かかけてもらったうちの一つがこれ。歌い始めのその瞬間に、椅子の上で全身がスライム上にとろけてしまいそうになるぐらいの、うっとりする 歌声。この感覚は過去にライブで数えるほどしか経験したことがありませんでしたが、おそらくCDでも、現代の録音でも、現代のシンガーでもこの音はあり得 ないんじゃないかな、というぐらいの特別な音。こういう、聴いていて「嗚呼……」と声を上げて悶絶するような音が、A&Mの試聴室からは飛び出す ことがあるので、ほんと沢山の人に聴いてほしいんですよね。オーディオマニアじゃなくて、若い音楽ファンに。 2. あ、これ2011年かな。まあいいや。詳しく「約半年ぶり!ピュアオーディオ視聴会・番外編「ピュアオーディオで聴こう!DSD試聴会 Vol.2」レポートな どに書きましたが、これはほんとにすごかったです。東京の人はOTOTOYとかがDSDのイベントしてていいよなー。ちなみに上記記事は西川文章さんのお 話が読める貴重な記事でもあります。 3. mmm /ほーひ 2012年から、HOP KEN杉本くん「“いい試聴機”で聴こう！ほ〜ぷ軒わくわく試聴会というイベントを始めたんですが、そこで聴いて驚いた一 枚。 mmmはライブでは聴いていて、ご多分に漏れずその歌声に魅了されたわけですが、多分CDでこの歌声の魅力は再現されてないだろうなぁ、と高をくくってい て、アルバムは聴いていませんでした。ところが最初の試聴会の前日に、打ち合わせがてらいろいろ聴いていた中で聴いたこのアルバムに、息を飲むぐらいライ ブでのあの形容しがたいなまめかしさがしっかりとパッケージングされていて、思わず勃……胸が高鳴りました。 いわゆる昔の名録音で言うところのハイファイなサウンドではなく、ローファイ感すらあるんですが、mmmという人の歌の魅力を見事に捉えていて、オーディ オ全盛期ではない、僕らの時代の「いい音」というものを考える上で、とても重要な一枚なんじゃないかと思いました。 4. ゑでぃまぁこん /やっほのぽとり これ、2010年四 回目の視聴をやった時に、おとうた通信でお馴染みのマサオさんが持って来てくれてて、当時もすごく音が良くて感動したんですけど、去年杉本くんの お店（ほ〜ぷ軒）に売ってるのを見つけたので、三田村管打団?の試聴で、録音した文章さんと一緒に聴いたんです。やっぱり文章さんもこの録音は気に入ってい て、加えて色んなエピソードも聞けてすごく面白かったんです。ね、面白かったですよね、来てくださった皆さん。 5. ROVO /MON これもmmmと同じく、ほ〜ぷ軒わくわく試聴会の前日に聴いたんですが、実はピュアオーディオ視聴会始めた当初からこのアルバムはピュアオーディオにマッ チする気がしてて、来てくれるお客さんの誰かが持って来てくれるのを期待してました。でも今まで11回やってて一人もいなかったんですよね。僕は普段進行 役なので自分の聴きたいものって全然聴けないんですよ。なので、このタイミングに聴きたかったものをいくつか聴いたわけです。そしたらこのアルバム、やっ ぱりすごかったんですよね。音がめちゃめちゃクリアで、厚みもあるし定位もしっかりしてるし、野外で聴くROVOの、あの天高くどこまでも昇って行くよう なスケール感と高揚感がちゃんと入ってるんです。 6. Altered States /Live In Tokyo これ、ほ〜ぷ軒にアルタードがいろいろ入荷したタイミングで買いました。二枚組で、一枚はNHKの公開録音、もう一枚はピットインの録音。ピットインの方 は別に大したこと無いんですけど、NHKの方はすごいです。音場感もあるし、それぞれの音にも立体感があるし。63分一本勝負の大作ですけど、いい音で じっくり聴きたい一枚です。 7. Frank Zappa /Hammersmith Odeon 2011年はほぼザッパしか聴いてませんでしたが、2012年は半年ぐらいでなんとか他の音楽も聴けるようになってきました。しかし年の初めはやはりザッ パ漬けで、この時にザッパの発掘音源ものを公式サイトからまとめ買いしました。 70年代後半のザッパは完全にデジタル廚になっていて、デジタル録音したライブ音源を切り刻んで継ぎ接ぎしてアルバムを作っていたんですが、曲も演奏も編 集も良い一方で、音はからっきし駄目。手を加えすぎたせいなのか、音が痩せちゃってパサパサ。あと、ライブアルバムでも複数のライブを混ぜ合わせて、実際 にはやってないセットリストになってたりするので、やはり僕がザッパ遺族に期待するのは「手を加えていない、録ったままの状態のライブ音源」のリリースな わけです。 で、このアルバムはかなりそれに近いと思われる内容で、ノーカットと思われる編集の加わっていないセットリストですし、音もどっしりとしています。何より ザッパの声が低く太い。元々低く太い声ですが、ことさらに低く太い。これがもう迫力あって、オープニングのMCからステージに帝王のように君臨して客席に 向かって「Louder!」とか言ってるわけですからたまらんのです。 8. Staff Benda Bilili /Tres Tres Fort これもROVO同様、誰かが視聴会に持って来てくれるのを期待してたけど誰も持って来てくれなかった一枚で高槻電器工業さんの試 聴で聴かせてもらいました。高槻電器の人も言ってましたが、すごくいいんですよ、音が。ここの一番下にある写真 がレコーディング風景だと思うんですが、それでこんなすごい音録れんの、って感じで。2ndが出ましたが、こちらは未聴。多分今度はちゃんとスタジオで 録ったんだろうと思うんですが、どうなんですかね。 9. Frank Sinatra /Sinatra At The Sands あーネタが尽きてきた。いやーほんとにいい演奏のものはいっぱいあるけど、いい録音のものって少ないわ……（なんかさぁ、俺超こだわって録ったしみたいな 人でも聴いてみたら全然録れてないやんみたいなことも多いしさぁ……）ということで、また古い一枚。この中の一曲「Get Me To The Church Of Time」は「マイ・フェア・レディ」のサントラで、三田村管打団？も「おめでとう」という曲で取り上げてるので、前述の管打団の試聴会の前に再度聴き直 してたんですが、やっぱすごいわこの人。歌上手過ぎ。このアルバムはピュアオーディオ視聴会の定番なんですが、毎回「Fly Me To The Moon」しかかけないんですよね。でもアルバム通して音もすごいしバックのカウントベイシーオーケストラもすごい。ちなみに「Fly Me To The Moon」はエヴァのエンディングで初めて聴きました。 10. 三田村管打団？ /!! ほんとはここに「!!!」って書くつもりで準備してたんですが、リリースが順調に遅れているので、「!」を一個減らしました。実はこのアルバム、あんまり いい音だと思ってなかったんですよね。それはここであんまり書かない方がいいような事情によるものなんですが、改めてちゃんと聴いたら素晴らしくって。メ ンバーも録音した文章さんも1st（「!」）はかなり反省点の多い録音だけど、こちらはお互い満足してる、というだけあって。 で、次のアルバムは……。

■今年のこの１曲
Nat King Cole "Stardust"

■自己紹介
石黒亮（“いい音”を聴こう！ピュアオーディオ視聴会）

ライブに行くとブログを書く人。

http://asianplasticparty.com/blog/

「“いい音”を聴こう！ピュアオーディオ試聴会」主宰。
http://www.rockets.co.jp/blog/?page_id=473

「“いい試聴機”で聴こう！ほ〜ぷ軒わくわく試聴会」言い出しっぺ。

http://asianplasticparty.com/blog/?cat=4

楽ちゃんのおとうさん。

01/27 (日) に南船場epokにて「第三回“いい試聴機”で聴こう！ほ〜ぷ軒わくわく試聴会 特集・epokが選ぶ2012年ベスト！」を開催
http://asianplasticparty.com/blog/?p=1778

02/20 (水) に木屋町アバンギルドにて「“いい音”を聴こう！ピュアオーディオ視聴会・出張編」を開催
http://www.rockets.co.jp/blog/?p=2345

■2012年はどんな年でしたか？

もういつ死んでもいいや、というぐらい良い経験を沢山させていただきました。クソみたいな世の中ですが、楽しいこと、楽しい人、楽しい場所はいっぱいある んだな、と改めて。

そう言えば、一番よく顔見たミュージシャンってソウルフラワーの中川さんだったな。関電前やデモ で。

表 紙へ