おれ的わたし的2011ベスト


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サカモトユイ

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2011年にリリースされた音楽で、良かったものベスト10

1.坂本慎太郎 /幻とのつき合い方
  ゆらゆら帝国の『空洞です。』がリリースされた時、「次のゆらゆらのアルバムはアカペラだと予言する」と言った知人がいて、凄くハッとさせられたのを今でも覚えている。
  結局、アカペラのゆら帝は、聞けないままに終わってしまったけど、坂本慎太郎のこの作品は『空洞です。』の空気感を更に熟成させた傑作だ。
  『空洞です。』より更に抑え目の音達は微熱にうなされるように身体にまとわりついてくるが、これが気持ち良くて仕方がない。
  意外にポップでキャッチーに作り上げられていて、聞き易いのだが、そこから深みにはまってしまいそうな危険な匂いの香らせ具合が最高に痺れる。
  非日常な出来事が多すぎたこの一年、自分がどれだけ幻を食らっていたかもわかった一年だった。そんな空虚感を見事に音で射抜いた作品。
  みんな思ったことかもしれないけど、いつもの日常を歌った8曲目のタイトルが「何かが違う」。ホントビリビリデス。

2.Jonathan Richman /O Moon, Queen Of Night On Earth
  音楽から伝わってくる滋養が半端ない。噛めば噛むほど味が出てくる。スルメイカみたいな音の数々は聴く者の心を離して止まない。
  その音達から脳天に浮かんでくる景色の数の半端の無さには呆れるばかりだ。最小の音数から最大の想像力を生んでしまう素晴らしい音楽だ。

3.neco眠る /LIVE20101229
  活動休止前最後のリキッドルームでのパフォーマンスを収めた一枚。配信サイト「DIY STARS」内の震災義援プロジェクトからのリリース
  何も言わなくても最高なんだけど、全く狙っていないヘタウマ感が作り出すグルーブには汗をかかずにはいられない。
  盆踊りからクラブのダンスフロアまで全方位対応で踊らせてしまうこの音を聞いて、枯れた日常が随分と潤ったものになった。
  6畳一間がダンスフロアに変わってしまうのを一体何度体感しただろう。夢心地の中にリアルを手に掴ませてくれる素晴らしいバンドだ。
  2012年はライブハウスで汗まみれになった自分を呆れた顔で見る嫁に「necoが悪い」という言い訳をいっぱいいっぱいしたいぜ。

4.Sallie Ford & The Sound Outside /Dirty Radio
  昨今は、ビビアン・ガールズやらゾーズ・ダーリンズとか最高にあばずれな音楽に出会う機会がたくさんあったのだが、サリー・フォードはもう本当に最高です。
  ロカビリーとR&Bを足して二つに割ったような音の上をソウルフルに歌いあげる彼女の歌声はパワフルで実に情感に溢れている。
  音だけ聞いたら黒人かと思うぐらいにパンチ力があって拳が自然と振りあがってしまう。日本だと、うつみようことか、大西ユカリみたいなイメージだろうか。
  こういうアホみたいにパワフルな音楽を今年はたくさん聞いていた気がします。

5.Doddodo /ど
  難波のビョークことドッドドの最新作。
  これまでの攻めの音色とは一転して、童謡を思わせるようなフレーズを中心にサンプリング、エディットを多用した音作りで、ウタに寄った作品に仕上がっている。
  ライブでは既に何度も耳にしている曲がほとんどだが、現場の空気感で培われた熟成度が見事にパッキングされていて、実に気持ちが良い。
  音の粒達が脳ミソの中で跳ねまくって、ドンドン膨らみに溢れてくる。
  所謂、天然な感じもあるのだけど、それ以上に表現への逼迫した迫り方が音のイメージを超えてアグレッシブな一面を引き出している。
  だからこその「たぬき」なのだと自分は思っている。素晴らしい。

6.Battles /Gloss Drop
  同系統(自分的に)で言うと、にせんねんもんだいのライブ盤も良かったのだけど、よりポップさが増したバトルスのオリジナル盤を推します。
  メンバーの脱退を経て、これだけふっ切れた作品が届けられたのは嬉しい限り。世間的には評価の高い前作よりもこちらの方が好みです。
  ひたすら楽しくて、ひたすら踊らせられる。それでいて、彼らにしか作り出せない音がそこにはあって。
  遊び心と実験的な精神のぶつかり合いが実に高い次元で音楽の中で成立している実に素晴らしい作品だった。

7.鴨田潤 /「一」
  イルリメが弾き語りで作り上げた鴨田名義の初作。ラッパーサイドで見せるアゲアゲな感じとは一転して、自分の内側を吐露するようなナイーブさを音にした作品だ。
  全編自作自演の宅録でお世辞にも音が良い作品とは言えないが、その音触りに親密さがメチャクチャ込められていて、音から耳が離れない。
  そこに恥じらいも余計な意気込みも感じさせずにひたすらウタと向き合う姿は本当に感動的だ。
  ラストを飾る16分の大作”プロテストソング”は大名曲。

8.Ponytail /Do Whatever You Want All The Time
  ボアダムスとも親交のあるボルチモアの爆音インストバンドの2作目。
  (アートワークはEYEが担当とのこと)相変わらずのハッチャケ具合が最高なのだが、前作よりもバンドのグルーブ感が増幅されて音像がより塊となって聞こえてくる。
  手を変え品を変え飛び込んでくるフレーズの一々が変態さに溢れていてグイグイと引き込まれていく。
  アルバムの最初から最後まで攻めの空気に満ちていてバカみたいな勢い抜群で最高。来日公演切望です。

9.KETTLES /ビー・マイ・ケトル
  本年度の邦楽ニューカマーの中では抜群だった。女子ドラマーに男子ギタリストというホワイト・ストライプス形式のバンド。
  最近の若い音楽ってパッと聞いてカッコ良い音ばかりを目指していてほとんど面白さを感じなかったが、ケトルスの音は最高にもがいていて、正真正銘の若い音で非常に良かった。
  とは言え青臭さだけではない世界観の広がりも感じさせられる所も他のバンドとは一線を画している。
  もう一息ふっ切れたら2012年の苗場食堂ぐらいは余裕でいけるはずだ。パワフルなライブパフォーマンスも一聴の価値あり。
  蛇足を述べると、東京のバンドはどうも中庸になり過ぎている気がする。もっと表現のレッドゾーンへ振り切り幅が

10.The Black Lips /Arabia Mountain
  やっぱり一年に一枚ぐらいはこういう下世話で最高に汚い音の一枚に出会いたい。もはやベテランの域に達した感のあるガレージ・バンドの雄。
  まるでライブハウスで聞いているかのようなサウンド・プロダクトは彼らの汗やらなんやらが生々しく聞こえてくる。
  やりたい放題やってきた人達ならではのストレスフリーな音はジャンル云々以前にこれぞ音楽と言う新鮮さが溢れていて何度でも再生可能な音楽を届けてくれている。


 順不同で邦楽5枚、洋楽5枚をセレクト。
 今年はというか来年も含めてまだまだ激動の時間を過ごさざるを得ないのかもしれないが、こうして音楽を聞いて楽しめる毎日にやはり感謝をたくさんしたいと例年になく強く思ってます。
 今年も大阪界隈と米インディー界隈をディグする日々が続きました。何となくですが、パワーがあってひたすら楽しいという音楽を好んで聞いていたような気がします。
 時代の空気とか読まなくたって、何かを伝えられる音楽がたくさんあるのだということを身を持って体感した一年でした。
 こういう音楽を聞いて自分は名前も知らないたくさんの人達と何か共有し、結果として時代の空気みたいなものを作り出していけばいいんじゃないのかと思ってます。
 そう言えば、デモに初めて参加したのも今年の事でした。来年は更に主体的に具体的に動いていきます。
 あと蛇足を一つ言うと、こんな時代だからこそ清志郎がどんな歌を歌ったのかをとても聞いてみたかった。









2011年にリリースされた作品以外で、よく聴いた音楽

遠藤賢司 /不滅の男
⇒これが、Nike+が言うところのパワーソングってやつです。

ソウルフラワーユニオン /エクザイル・オン・ザ・メインビーチ
⇒こんな時だからこそ、こんな自分だからこそ。と、いつものように聞いている。








今年のこの1曲
住所不定無職 /狂言メッセージ
 ボートって本当にいいバンドだったと再確認したのと、マーヤのスクリームの破壊力が凄過ぎて本当に痺れた。
 それをこの10年代の天然素材バンドが実に痛快に演奏している様がとってもカッコ良かった。
 特段、今年を象徴しているわけではないけど、自分の中の音楽傾聴史が思わぬ形で重なって新しい何かを提供してくれた事が非常に嬉しかったので。

中川敬 /満月の夕
 解き放て命で笑え。この一年ほどこの歌詞が身にしみた年は無いような気がする。素の中川バージョンもバンドとは違った味わいで良く聞いた。












ライブ、イベント等々で良かったもの
イルリメ@メテオナイト
⇒自然発生的なダイブって最高。それは抑えられない何かを持っているってことで。そういうのってメチャクチャ大切だと思う。

眠眠眠a.k.a neco眠る@スケーターナイト
⇒何とドラムにnaniと和田晋二、ギターに栗原ペダルを据えるという字面だけで悶絶しそうなスペシャルナイト。本当にneco最高です。
  エンガワでみせたあのドラムバトル、そして青天井のアツい盛り上がり。今年というか墓まで持ってく価値ありのひと時でした。来年は頼んだよ。

Wilco@フジロック
⇒あれだけミュージシャンシップの高い演奏をあの場所で聞けたことは夢のようだったが、本当は夢にまで見たいたことが実現したということだった。
  実に幸せな時間だった。

オシリペンペンズ@こんがり音楽会
⇒イベント自体も最高だったけど、この日以降からオシリペンペンズを聞く耳が変わってしまった。
  本当の意味でのオシリペンペンズが自分の前に降臨したのだ。モタコが作り出すヒリヒリとした空気とスカスカな音達が、グルーブを作り出し、会場全体を包み込み様は感動以外の何物でもなかった。

あとは阿佐ヶ谷で見たドッドドとか、下北沢インディーファクラブとか、ベースメントバーで見たズボンズとか、DON29のレコ発とか、フィーバーで見たnaniのイベントとか、キンブラ全般とか、
もちろんフジロックとか、楽しい時間がたくさんありました。来年はもっとライブ行きたいデス。










音楽以外でのベスト10
銀河高原ビールが美味し過ぎたこと
ハーフマラソンを走ったこと
監督失格に胸打たれたこと
引っ越したこと
エジプトレコードへ行ったこと
展ぎゃん3Dが楽しかったこと(なぎ食堂最高)
全く飲みに行かなくなったこと
一週間の献立をしっかり考えるようになったこと
CD屋でCDを買わなくなってしまったこと
バルセロナがやっぱり凄かったこと








自己紹介
1978年生まれの高円寺在住のサラリーマン。酒には飲まれるタイプだけど止められない。どちらかと言えば、早寝早起な方だと思います。








 
2011年はどんな年?
激動でした。溺れて水の中を必死にもがくような一年。2012年は多少なりとも水から顔を出したいです。











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