おれ的わたし的2011ベスト


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石黒亮

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2011年にリリースされた音楽で、良かったものベスト10
(全て過去のリリースで、全てザッパ)


1. Broadway The Hard Way
1984年にライブ休止宣言をした後、大統領選挙のプロパガンダ目的として行われた1988年ザッパ生涯最後のツアーは最終的に3つのアルバム(「Broadway The Hard Way」「The Best Band You Never heard In Your Life」「Make a Jazz Noise Here」)となってリリースされますが、その中で真っ先にリリースされた政治色全開の曲を選りすぐった作品。結局ザッパの思惑はあらゆる意味で大外れとなります。反共和党キャンペーンとしてライブ会場で選挙人登録を行うほどの気合いの入れようでしたが、大統領は共和党のブッシュとなり、ライブツアーはメンバー感の確執によって中断、チケットの売れ行きも芳しくなかったらしくザッパは大赤字を食らうことに。そういった、権力に歯向かったがコテンパンにされてしまったというパンクス状態にシンパシーを抱いてしまうのはこの年に東京都知事選、大阪府知事・大阪市長選が行われ、見るも無惨な結果を招いてしまったことにもよります。結果、何度もリピートして聴いてしまいましたが、政治色云々抜きにしても、歌ものソング集としてのクオリティが尋常ではなく、ここに登場する新曲たち(歌ものとしては生涯最後の作品集となる)のメロディの素晴らしさ、コンポージングの巧みさは、20年以上のキャリアの中で膨大な楽曲をリリースしたその最果てにしてまだ湯水のごとく芳醇なアイデアが沸き出して止まらない、という天才の底知れなさも伺えるのです。1988年のバンドはザッパが100曲に及ぶ楽曲(カバー、新曲、旧曲のリアレンジ)を4ヶ月にわたるリハーサルで叩き込まれてツアーに臨んだものですが、本作収録の新曲が中心になったツアーであることは冒頭に書いた目的からも察することが出来ますが、デビュー盤に映るふてぶてしい表情と晩年の「Yellow Shark」に映るやつれきった表情を同時に見ながら全キャリアを俯瞰できる状態から聴いている耳で聴いても、飛び抜けてクオリティが高く、アルバム通して聴いても転げ回りたくなるほどわくわくさせてくれる痛快無比な傑作として、たまらなく好きな一枚。間もなく自宅に到着するアナログ盤(収録曲はCDの約半分)が楽しみで仕方ありません。

2. Meets The Mothers Of Prevention
「ゴア」という名前は「不都合な真実」以降一般的には非常にポジティブで環境問題に立ち向かう正義の人というイメージがあるでしょうが、音楽ファン、特にメタルファンにはPMRCという略称(正式名称はペアレンツ・ミュージック・リソース・センター。卑猥な四文字言葉などが入った歌詞の掲載されているアルバムのジャケットに「Parental Advisory - Explicit Content」というマークが付いているのを見たことがあるでしょう。要請を受けた全米レコード協会(RIAA)によって付けられているものですが、僕がRIAAという名を知ったのはごく最近、アナログ盤をアンプで再生する際のフォノイコライザーの補正カーブが同協会によって制定されたために「RIAAカーブ」と呼ばれているという情報に触れた時でした)とともに、彼の妻ティッパー・ゴアの憎むべき検閲のイメージが強いはずで、MEGADETHの楽曲にもPMRCを直接的に糾弾したものがあるほど。ライブビデオ「Does Humor Belong In Music?」内で「Honey, Don't You Want A Man Like Me?」の歌詞の一部「フェイバリット・グループはヘレン・レディ」を「フェイバリット・グループはTwisted Sister」と変えていたことの意味が初めて観た当時(10年以上前)全く分からなかったんですが、ザッパ同様、Twisted Sisterのディー・スナイダーがPMRCの意見公聴会として招かれていたことを後に知ることとなります。本作収録の「Porn Wars」はその公聴会での発言をサンプリングし、シンクラヴィアやThing-Fish他のアウトテイク素材と混ぜこぜにして醜悪きわまりない大作となっています。倍速再生したり卑猥な単語だけ切り出してリピートしたり、音楽を検閲する立場の人間たちの愚かしさを極限まで馬鹿にし尽くしたコラージュ芸術は、僕にとっては学生時代にカセットテープでメタルのCDからサンプリング・コラージュして遊んでいた記憶を如実に思い出させ、「これぞ最高の音楽だ」と狂喜せざるを得ない作品です。1stアルバム収録の「Return Of The Son Of Monster Magnet」しかり、こういう楽曲が作れるからこそザッパの音楽は凄まじく魅力的なのです。

3. Lather
1970年代後半にリリースされたいくつかのアルバムは、元々ひとつの作品としてリリースされるはずだったものが、当時所属していたワーナーが渋ったせいで細切れに分割され、本来ザッパがリリースしたかったLP4枚組でのコンセプトは完全に潰えてしまうことになります。当時ザッパはワーナーへの当てつけにこのLP4枚分をまるごとラジオで放送した、というエピソードがあります。死後、その意図を汲んだLP4枚組とCD3枚組でリリースされたその全容は、現代音楽、ジャズ、ポップス、ハード・ロックといったジャンルを無差別に横断した「ザッパ音楽の総合見本市」となっており、ワーナーの怖じ気づく顔が脳裏に浮かんでくる怪作。想像するに、ザッパの感覚はメインストリームから完全にズレていました。そして本人はどこかそれに無自覚なところがあり、時にそのえげつなさが発露し、「200 Motels」のサントラのようなクラシックとカントリーとロックンロールとスカムが一斉に鳴っているような奇怪な作品が生み出されるわけです。その奇怪さこそが魅力である、と言い切るにはメジャー音楽レーベルは保守的過ぎたはず。この才能の爆発しているすし詰め状態の楽曲の山が、たった一人の脳みそから生み出されていることに驚愕してしまうのは、単に手広くやってる器用貧乏さによるものではなく、それでいて「捨て曲が無い」という奇跡的なクオリティが存在するからで、僕はザッパ入門作として、意地悪にもこの超大作を勧めざるを得ないのです。それはザッパ偏愛により、どの作品でも一枚だけ聴いたところでザッパの本質には全く辿り着きようがないという事実の中で唯一「これだけまとめて聴ければある程度はどんな音楽家なのか見当がつくだろう」という無駄な親心のようなもので、本作をのぞいた場合、キャリアを総括したライブ録音シリーズ「You Can't Do That On Stage Anymore」二枚組6タイトルを全部聴いてもらうしかない、という結論に至ります。

4. Waka/Jawaka
ザッパは結局のところ不遇の人で、そのキャリアにおいて多くの挫折と困難に見舞われたわけですが、恐ろしいまでのクリエイティビティと強靭な精神力と鈍感力、そして無神経さでひたすら強引に前に突き進んできたのだろうと思います。特に現代音楽への取り組みは大枚はたいて取り組むわりには散々な結果に終わってしまう人生で、ようやく理想に近い形で作品作りに取り組める状況になりつつあった頃に他界してしまったという感があります。一般的にはジャズ・ロックと定義されるであろうこの作品も、前年にステージ上から客に突き落とされ、車椅子生活を余儀なくされてしまい(この直前にはライブ中に火災事故に見舞われ機材全てを喪失。これをディープ・パープルの面々が目撃し、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」が生まれるきっかけとなったわけです)、バンドも解散してしまったことをきっかけに、後の「ザッパ・スクール」と呼ばれる厳格なオーディションを始め、その成果によって生まれたアルバムなわけで、逆境に強い、とか、ピンチをバネに、とかいう次元ではなく、音楽を作ることにしか考えが及ばない救いようの無い馬鹿、という印象の方が強くなってしまいます。同ビッグバンド編成での姉妹作として「Grand Wazoo」があり、こちらの方が人気が高いですが、本作の切れ味の鋭さ、ビッグバンドに取り組み始めて息巻いている鼻息の荒さには興奮が止まりません。ちなみに当時のリハーサルを収録した「Joe's Domage」が妙に聴いていて安らぐのですが、「Wazoo」に収録された30分強の大作「The Adventures of Greggery Peccary」(後に歌ものとして発表される5年ほど前で、この段階ではインスト)を聴いてしまうと、その複雑奇怪さとこれを初見の客に向けて放つザッパの全方位的天真爛漫さにはさすがに呆れて言葉も出ません。

5. Freak Out!
まず全くどうでも良いこと(しかしザッパと大衆娯楽を深く知る上では非常に重要な点であるとも思われます)を書いておきます。「ダウンタウンのごっつええ感じ」に「挑戦者」というコントがありますが、本作の後半はこのコントと酷似します。それはさておき、1966年にこんなアルバムがリリースできたこと、デビューアルバムにして2枚組だったこと、前半はドゥーワップベースの上質なポップスであることなど、あらゆるディテールが謎であり、ザッパファンにとっても「後のザッパの音楽的要素が全て詰まった傑作」派と「ラスト以外は凡庸なアルバム」派に分かれていたり、1stアルバムのくせに、と言うべきか、だからこそ、と言うべきか、いちいち一筋縄で行きません。ザッパはサイケという表現を毛嫌いしていましたが、サイケにしか聴こえません(当時のサイケを好ましく思っていなかったのは、ロックミュージックを単なる娯楽ではなく「アート」と捉える当時の風潮にも反発していたことから音楽評論方面へ向けての敵意、そしてドラッグ文化への侮蔑の意図があったのかも知れません。ザッパがドラッグを嫌っていたことはよく知られた話ですが、一方で彼のバンド自体がドラッグに対していつもクリーンだったというわけではなく、彼によって問題視されればクビになる、という制度だったと考えるべきでしょう)。正気と狂気をイージーに一枚に収めてしまったようなストレートさと各曲の醸し出すねじれが尋常ではなく、ファーストコンタクトで一体これをどうやって理解できるのだろうかと首を傾げてしまい、当時大して売れなかったのもよく分かるわけですが、鈴木慶一が自宅で延々かけまくっていたこと、パンタが同作からシングルカットされた「Who Are The Brain Police?」からバンド名を引用したことなど、日本ロック史に多大な影響を与えていることも忘れてはなりません。そして、そういった歴史的背景を忘れたころに聴くと、その奥深く味わい広がる楽曲群の魅力の高さが再認識され、たまらなく癖になってくるわけです。

6. Sheik Yarbouti
「ザッパの最高傑作」。ザッパファンにとっては禁句に近いし、これ一枚によって知ることの出来るザッパの魅力はやはりほんの一部なのですが、作りたいように作り続けるザッパ音楽の世界と一般的なロックミュージックの嗜好から理解される範疇とが最もど真ん中に近い位置で交差しているのが本作でしょう。その後交差している点は徐々にセンターからズレていき、「歌多過ぎ」「喋り長過ぎ」というトゥーマッチな状況に陥ることになりますが、本作ではそのバランスも含めて、ザッパらしからぬ「押し」と「引き」の絶妙なバランスが保たれた貴重な一枚。そして前述のとおり、この分かりやすく完成度も高く、万人に好まれそうな本作を初心者に勧めようとは全く思わないわけです。年末にアナログ盤を購入し、「I'm So Cute」のエンディングがCDでは大胆にカットされていることを知るわけですが、後述する文献には一切載ってなかったのはザッパマニアからのCD世代のザッパファンへのギフトであろうと思います。ちなみにそのLPは、Aの裏がD面、B面の裏がC面という構成だったんですが、何故こんなことになっているのか理由をご存知の方、教えてください。

7. The Best Band You Never heard In Your Life
前述の「Broadway The Hard Way」同様、1988年のラストツアーを収録した作品で、ザッパ流ロック・ミュージックの集大成的ライブアルバム。ホーンセクションを携えたゴージャスなサウンドで畳み掛けるように繰り出される前半のザッパ名曲群に圧倒されます。後半の「Sunshine Of Your Love」「Purple Haze」も含め、カバー曲が多いのも特徴ですが、最後に待ち構える「Stairway To Heaven」が特に圧巻なのです。オリジナルを凌駕するような秀逸なアレンジで、ホーンセクションがギターソロパートをなぞらえ、そのバックをアフタービートのギターカッティングが疾走し、エンディングで怒濤のボーカリゼーションが締めくくる……凡百のカバーとはわけが違います。ザッパは、いわゆるロック・ミュージックに対しての批判的な発言も多く、過去にBeatlesのジャケットをパロディにした作品も出していますが、一方でその頃からジミヘンやクラプトンとの交流があったり、このツアーでもBeatlesのカバーをしていたりしますが、単純なリスペクトでカバーしているのか、皮肉の裏返しで本気でカバーしているのか、本心はどちらなのでしょうか。「Broadway The Hard Way」でもヒップホップ調の曲やマイケル・ジャクソンを引用した演奏がありますが、その真意をどう捉えるべきか。後年のミュージシャンがザッパの曲をふざけて真似をするという図式が思い浮かばない以上、結論はまだ出しようが無いかも知れません。

8. ザッパ関連の文献 「In His Own Words」、「レコード・コレクターズ1994年3月号」、「ユリイカ1994年5月号」、「フランク・ザッパ/キャプテン・ビーフハート・ディスクガイド」、「ZAPPA VOX」と、2011年になってザッパに関する文献をオークション、Amazonマーケットプレイスにて購入しましたが、これらを今年買い集めて読んでいたことに運命めいたものを感じたのは、「In His Own Words」におけるハヴェル大統領(1990年当時)との交流に関する詳しいインタビュー記事、「レコード・コレクターズ1994年3月号」におけるビーフハートの「Bat Chain Puller」について、ビーフハートが作品のリリースを断固拒否しているという記事を目にしたからで、ハヴェル氏は2011年12月に死去、そして「Bat Chain Puller」は同月ザッパの公式サイトでリリースが発表されました。そしてもうひとつこれらの文献を読んで感じたことで、僕が常々思っていたことと符合する話で言えば、「ザッパは、聴いたことがないことを容認してもらえるミュージシャンである」ということです。誰かミュージシャンを論じる、もしくは名前を引用する際、少なくてもいくつかの作品をそれなりに知っていなければ行けないものですが、ザッパに関しては「僕は聴いたことがないけれど」という言葉が免罪符的に使えてしまうミュージシャンで、過去に音楽家がその言葉を記しているものを何度か目にしました。象徴的だったのが、「ユリイカ1994年5月号」でのミュージシャンアンケートでの「あなたにとってザッパは?」というコーナーで、半数近くが「あんまり聴いたことがない」「ザッパの影響受けてるでしょ、って言われたことあるけど聴いたことも無い」、果ては「ステージでうんこ食べた人でしょ」とデマレベルの情報しか持っていない人までいる始末。さて、ザッパほどの知名度でありながら他にこれほど「聴かない」ことを堂々と並べ立てることの出来るミュージシャンが他にいるのでしょうか。それはザッパの名を「ディープ・パープル」「蝋人形」という、彼の音楽以外のインプットが圧倒的多数だからであろうと思いますが、やはりここにも音楽家としての「不遇」という言葉を思い浮かべずにはいられませんが、一方で「ザッパの影響受けてるでしょ、って言われたことあるけど聴いたことも無い」(正確には「影響受けてるでしょ、ってやたら言われるから聴いてみたけどよく分からなかった、すなわち影響なんて受けてません」という大友良英の言葉)と前述の「ダウンタウンのコントとの類似性」にあるように、非常に反応しやすい形での「アバンギャルド」という、ある種の普遍性がザッパの音楽には色濃く存在することの証左でもあるのではないでしょうか。やはり僕は、そんなザッパの音楽が面白くて仕方ないわけです。

9. Zappa In New York
ブレッカー・ブラザーズの結成が1974年、二人が本作のソースとなるニューヨークでのライブに参加したのが1976年、同バンドのテリー・ボジオを招いて「Heavy Metal Be-Bop」を発表したのが1978年。これは本作リリースと同年ということになる。「Heavy Metal Be-Bop」収録の、二人の代表曲としても人気の高い「Some Skunk Funk」でのマイケルの圧巻のソロワークは、本作では「The Purple Lagoon」ぐらいでしか聴かれず、ザッパバンドでの彼の更なる活躍は14年後にリリースされる「You Can't Do That on Stage Anymore, Vol. 6」収録の「Black Napkins」まで待たされることになりますが、本作の魅力はホーンよりもその厚塗りしまくったサウンドプロダクションで、楽器のオーバーダブは勿論のこと、後期ザッパの「デジタル至上主義」剥き出しのペラペラな音とは相反する厚みのある太い音でドラムスが暴れ回り、ギターがガンガン唸る猛烈にパワフルな演奏が生々しく描かれていて、後に「ライブ素材を加工してスタジオ録音みたいにしてリリースする」ザッパ以前の、生の迫力をより生々しく聴かせるプロデュース力が冴え渡っています。「Heavy Metal Be-Bop」を聴くなら本作聴いてからにしなよ、とジャズ界隈の人には言ってやりたいですが、僕も始めに聴いたのは本作ではなく「Heavy Metal Be-Bop」でした。

10. Weasels Ripped My Flesh
ジャケットのイラストから漂う一種独特の不安感、恐怖感は、正に内容の刺々しさ、禍々しさを象徴しているようで、1969年のライブ録音(リリースは翌年)であることを思えば、ラストでのメンバー全員が一気呵成にとにかくデカい音を出しているだけの轟音爆音ナンバーが、非常階段デビュー10年前に演奏されているわけですが、僕が記憶するに、JOJO広重は前述の「ザッパは、聴いたことがないことを容認してもらえるミュージシャンである」に符合する形で、自身のコラムで「ザッパはちゃんと聴いたことがない」というような趣旨のことを書いていたことから、また改めて普遍性を持った音楽家であることを、非常階段デビューから30年以上を過ぎた今改めて思わざるを得ないわけです。一方、本作は初代Mothers Of Invension解散後、同バンドでの録音をリリースした2作(もう一作はスタジオ録音による「Burnt Weeny Sandwich)」)のうちの一作という側面もありますが、後年のヘッドハンティングやオーディションで幾度となく組み替え続けたザッパバンドの技術面での向上では補い切れない、有り体で言うと「バンド・マジック」のような音の迫力と存在感が尋常ではなく、とは言え初代マザーズにおいても「ライブ盤」は本作とユルいミュージカル調の「Ahead Of Their Time」、楽屋オチ的喋りと破天荒な茶番劇中心の「You Can't Do That On Stage Anymore Vol. 5」ぐらいしか無いので、ザッパのキャリア上、アルバム通してここまで肉を切り裂き血が吹き出すようなエグい音が鳴っている作品は、後にも先にもこの一作であるように思います。ここでブートレグ……という話に至るわけですが、ザッパのライブ録音は本人の編集の手が入っていない(テレビ放映用のものなど)ソースをノーカットで聴くと構成に物足りなさを感じるものが多く、その理由はザッパの編集にかかったライブ盤のクオリティがとてつも無く高いからで、前述の1988年バンドでのライブ盤三作をシャッフルしようが好きな曲だけ組み合わせようがこの三作の選曲/曲順に敵うセットリストがなかなか見つけられないことからも察することが出来ます。ザッパの頭の中で鳴っている「本来こう鳴って欲しかった」という理想の音を再現しようと思うと、一度録音し、編集スタジオにて彼の手にかからなければ生まれて来ないのでは……と思うこともありますが、実際ザッパ自身がそう考えていた節もあり、「ユリイカ1994年5月号」に掲載されていたインタビューでも、デビュー当時からシンクラヴィアがあればミュージシャンを雇って創作活動することすらなかったとまで言っています。

【総括】
15年ほど前、初めてザッパの音楽を耳にしたのは会社の先輩が貸してくれた「Hot Rats」でしたが、全くピンときませんでした。数年後、リマスターブームに乗っかり、限定リマスターCDを買い集めていた僕は「Apostrophe (')」の24K GOLD DISCを購入しますが、やはりよく分からないままでした。しかしその後「One Size Fits All」を購入したときにようやく面白いと感じ、「Hot Rats」と一緒に借りて観ていた(そして当時ただ下品なだけでよく分からない音楽だと思っていた)「Does Humor Belong In Music?」のビデオを「ビデオソフト販売店の、奥のエロビデオのカモフラージュとして入り口付近に並べてある普通のビデオ群」の中から見つけて購入。その音楽の面白さに目覚めることになりました。 その後、数年おきにザッパのマイブームが訪れ、その度に何枚かアルバムを買っていましたが、そのマイブームのインターバルが徐々に狭まり、1年に一度来るようになっていたものが数ヶ月に一度になり、とうとう2011年は、ほぼ一年中、ザッパだけを聴き続ける結果となりました。 昨年も様々な名盤がリリースされ、僕も聴いた途端に「素晴らしい」と感動した作品もいくつかありましたが、どれも数度聴いただけでまたザッパに戻ってしまっていたので、やはり2011年はザッパの年であろうということで、ベスト10は全てザッパになりました。 ザッパを聴いたことがない方が、「なんだかわけ分からなくて面白そうだぞ」「とりあえず変な音楽みたいで面白そうだぞ」と思って興味を持ってくれたら嬉しいです。僕がザッパを聴き始めたのも、わけが分からない、変な音楽が聴きたかったからです。音楽を聴く際に、分からないことほど楽しいことはありません。そして、変であることほど深入りしたくなるものはありません。分かりやすくストレートな音楽、一度聴いた途端に大好きになるような、一目惚れする音楽を否定するつもりはありません。でも、そんなものばかり追い求めていては、明日には聴きたい音楽がなくなってるかも知れませんぜ。







今年のこの1曲
(全て過去のリリースで、全てザッパ)
1. Porn Wars (Meets The Mother Of Prevention)
2. We're Turning Again (You Can't Do That On Stage Anymore Vol. 6)
3. Dumb All Over (Have I Offended Someone?)
4. The Illinois Enema Bandit (You Can't Do That On Stage Anymore Vol. 6)
5. Honey, Don't You Want A Man Like Me? (Lather)
6. Planet Of The Baritone Women (Broadway The Hard Way)
7. Big Swifty (You Can't Do That on Stage Anymore, Vol. 1)
8. Dinah-Moe Humm (Baby Snakes soundtrack)
9. Waka/Jawaka (Waka/Jawaka)
10. Flakes (An Evening With Frank Zappa During Which…The Torture Never Stops)








ライブ、イベント等々で良かったもの
1. Sweet Dreams presents Jad Fair + Tenniscoats Japan Tour 2011 at 旧グッゲンハイム邸 (Hyogo)
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2. 「天辺から爪先までvol.8」 at 旧グッゲンハイム邸 (Hyogo)
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3. 二階堂和美 at Shangri-La (Osaka)
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4. 長岡京ソングライン '11 at 長岡天満宮 (Kyoto)
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5. 「音楽と演劇の年賀状展」クロージングイベント at 梅田OZC GALLERY+CAFE (Osaka)
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6. POPPOPO at NAKED (Osaka)
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7. <BEARS 24th ANNIVERSARY SPECIAL> 山本精一 presents 大ミュージカル "水道メガネ殺人事件" ?すごいロボット宇宙人の世界編? at Namba BEARS (Osaka)
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8. AUTORA at NOON (Osaka)
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9. SAKEROCK at BIGCAT (Osaka)
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10. 新春猫アレルギー祭 at Namba BEARS (Osaka)/ikegayaishiguro.blog2.fc2.com








音楽以外でのベスト10
1. 視聴会が春にいったん終わったんですが、
2. 苦し紛れにASCとneco眠る森さんにご協力いただいてDSD試聴会をやったら
3. サンレコ編集長の目に留まり
4. それがトリガーになって(と編集長ご本人談)
5. 内橋和久氏を迎えてのPremium Studio Liveが実現し
6. そうこうしてるうちに旧グで視聴会が出来ることになり 7. なんだか視聴会休んでからの方が各方面から好意的な反応をいただいて
8. これが閉鎖モテかとおもいつつも蓋を開けるまで分からないので
9. わりと不安を抱えながら色んな方をお誘いしてたら
10. 色んな方がきてくれそうなので、逆に緊張してきて吐きそうです。







■自己紹介 石黒亮(“いい音”を聴こう!ピュアオーディオ視聴会)
ライブに行くとブログを書く人。 http://ikegayaishiguro.blog2.fc2.com/
「“いい音”を聴こう!ピュアオーディオ試聴会」主宰。 http://www.rockets.co.jp/blog/?p=2014
楽ちゃんのおとうさん。
01/25 (水) に旧グッゲンハイム邸HPにて「グ音楽講座7 “いい音”を聴こう!ピュアオーディオ視聴会・出張編」を開催  http://www.nedogu.com/blog/archives/4422








2011年はどんな年でしたか?
とてもつらいことととてもうれしいことがどちらも人生最大だった年でした。










過去投稿  2009 2008



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