おれ的わたし的2011ベスト


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dr.pulse





2011年にリリースされた音楽で、良かったものベスト10


1.RAS G / DOWN TO EARTH
 J DILLAの『DONUS』は、彼の死の直前に病床で作られたという事でやや感傷的に語られがちですが、そうした前情報をとっぱらって聴くと、
 聞き手の予測不能な箇所でループしてたり、意味不明な声ネタが散りばめられていたり、サイレン音が飛び交ったり、味わい深いスクラッチが入っていたり、
 2分未満の楽曲が次々とカットアップされたりとユーモアに溢れる楽しい作品でした。
 RAS Gの今作はそんな『DONUTS』の楽しい部分を受け継ぎながらもソウルミュージックのネタを多用したそれとはまた違った、
 レゲエ〜ダブの要素を強く感じさせる内容になっています。
 元々はラスタの伝道師を目指していたという彼の個性を発揮した作品に仕上がっていて、素晴らしかったです。

2.SAMIYAM / SAM BAKER'S ALBUM
 そんなRAS Gと共に語られる事の多いSAMIYAMの今作はRAS Gより更に浮世離れしていて、
 SUN RAやLEE PERRY、GEORGE CLINTONの系譜に属するRAS Gのフューチャリスティックな指向とはまた違った、オブスキュアで飄々とした寄る辺無さを感じるものになっています。
 こういった感覚は90年代、KEN ISHIIやSUZUKISUKIが粗末な機材で淡々と作っていた作品のそれと共通するものを感じます。
 アイデアを丸投げしたようにすら思える楽曲構成の中に、SP-303でサンプリングされたビットレートの低いビートや
 BASS STATIONの太いベースラインを緻密に配置する…といった対称的な要素の混在、
 各楽曲の終わりが常にゆっくりフェイドアウトしていく、といったことがその感覚を強調しているかと思われます。

3.GILLES PETERSON / GILLES PETERSON PRESENTS HAVANA CULTURA THE SEARCH CONTINUES…
 GILLES PETERSON のキューバ萌え萌え企画第二弾。
 前作『HAVANA CULTURE - NEW CUBA SOUND』ではFELA KUTIの"ROFOROFO FIGHT"のまさかのキューバ・バージョンを披露するというDJに嬉しい企画があって驚かされたものですが、
 今作のDISC2ではキューバ人ラッパーをフィーチャーしたいくつかのHIPHOPナンバーが聞き物。これはHIPHOP好きには是非チェックしてもらいたい。
 ジャムセッション的な印象を受けたトラックの多かった前作よりも一つ一つの楽曲がより作り込まれたものに仕上がっているのも特徴。
 キューバ人ミュージシャンとの関係も前作より更に深まっており、その成果はDISC1に結実しています。


4.MADLIB / MEDICINE SHOW VOL.9 CHANNEL 85 PRESENTS NITTYVILLE
 完成度の低いお蔵出し音源満載でお茶を濁しまくっていると各方面で悪評さくさくのこのシリーズ。
 MADLIBいい加減にしろよ、俺たちの出費がMADKIBのレコードコレクションに消えるのは我慢ならんとの怨嗟の大合唱が聞こえて来そうです。
 このシリーズ、気がつけばどこのディスクユニオンにも中古で出回り、アマゾンでは軒並みプライスダウン。
 というわけでこの『NO.9』も大方のヘッズからは無視されまくりですが、イヤイヤなかなかの拾い物。
 これ、MADLIBがTALIB KWELIと組んだ『LIBERATION』や、MF DOOMと組んだ『MADVILLAIN』同様、一人のラッパーとガチで組んだ作品なんです。
 今回組んだお相手はFRANK-N-DANKのFRANK NITT。MADLIBのプロダクションが『LIBERATION』や『MADVILLAIN』とはまた違ったアプローチになっているのも興味深いところです。
 サンプリングはいささか控えめになり、ドラムはTR-808のような機材音源を多用したバウンシーな仕上がりに。
 同じく2011年に出たM.E.DのアルバムにもMADLIBは大々的に参加していましたが、そちらよりもプロダクションに進化した攻めの姿勢が感じられるコチラを僕は押します。

5.USSR SAMPLED
 70年代のソビエト連邦時代のレコードをサンプリングしたロシアRAPとその元ネタをMIXするというニッチな音楽好きには溜まらない企画。
 ソビエト連邦時代の音源もロシアRAPも普段なかなか触れる事が出来ないのでお得観満載です。
 70年代のソビエト人は結構ちゃっかり西側の娯楽音楽を自分のものにしてたんだネと気付かせてくれます。
 http://www.beatmp3.net/ussr-stuff-sampled-by-hip-hop-artists-mixed-zencd-set.htmlでレッツDL!








その他、よく聴いた音楽

冨田勲 / 展覧会の絵
 冨田勲大先生が70年代当時まだまだ一般的でなかったシンセサイザーを駆使して作り上げた一大電子音絵巻。
 通して聴くと、作曲者ムソルグスキーは亡くなった親友の魂を天国に送り届けるつもりでこの作品を作ったんだなあ、としみじみ感じてしまいます。
 ラベルの管弦楽編曲バージョンが一般的ですが富田先生は全く負けてませんヨ。
 ちなみに管弦楽編曲バージョンではラベルよりもストコフスキー編曲のものが個人的には好きです。


ヌスラット・ファテ・アリー・ハーン / 法悦のカッワーリーII
 昔から好きな一枚でしたがやっぱり今聴いても最高です。
 ビバップの様にそれぞれの歌い手たちが延々ソロを競い合っているのが楽しくて楽しくて、もういつまでも続けてくれよと思ってしまいます。
 ヌスラット・アリー・ハーン の作品はレコードを含め何枚か持っているのですが今のところこれが一番良いですね。
 ちなみに僕はこのCDを地元の図書館の視聴覚コーナーで借りて焼きました。


DMITRI SHOSTAKOVICH SYMPHONIES NO.5-8,10-12&15
 ソビエト連邦の誇る最強の指揮者ムラヴィンスキーがショスタコーヴィチの交響曲を演奏した音源を集めたBOX SET。
 ムラヴィンスキーはレニングラードフィルハーモニー交響楽団をしごきまくり、百人以上の団員を一糸乱れぬままもの凄い早さで演奏させるまでに叩き上げた鬼指揮者で有名ですが、
 ここではその成果を技術的に非常に難易度の高い現代作曲家の作品で味わう事が出来ます。
 ソビエト連邦にはグールドもチャーリー・パーカーもいなかったけどムラヴィンスキーがいたじゃないかって思うんです。そのくらいスーパーモダン。


JOHN LEE HOOKER 10CD SET
 独特なギター弾き語りで有名なジョン・リー・フッカー爺さんの音源を10枚のCDに収めた廉価版CD BOX SET。
 タワレコで1600円位で買いました。
 一部バンド演奏はあるものの、殆どがギター一本の弾き語りで、ずっと通して聴いているとまるでミニマルテクノを聴いているかのような軽いトリップ感が味わえます。
 地獄か、はたまた天国か。


THE COMPLETE WORKS OF FELA ANIKULAPO KUTI
 フェラ・クティの公式録音を全部で26枚のCDに収めたBOX SET。
 DVDも付いて来ます。円高のおかげで一万円とちょっとで手に入れる事が可能でした。文句なしに最高です。










今年のこの1曲
SALIF KEITA / DERY

 別に今年リリースされた作品ではないですが…この曲を一番何度も聴きましたので。
 辛い事、悲しい事があったとき、この声に何度救われた事か。解説になってませんネすみません。
 日本盤にも歌詞カードついていないのが残念。










■ライブ・イベント等で良かったもの
 2011年は休日をかなり仕事にとられ、なかなか行けませんでした。いろいろ行けた人ウラヤマしい!










音楽以外でのベスト10
読んだ本でもあげておきます。2011年は映画鑑賞も読書も出来る時間が少なかった…

ロイド・ブラッドリー / ベース・カルチャー
 ジャマイカ人の廃物利用精神って素晴らしいなあって思いました。あと、他のサウンドシステムが持ってない必殺の一曲を「スペシャル」と呼びナイショにしていたり、
 遂には自分たちでダブプレートを作り始めるというのも、音楽がただでDL出来る時代にはないハングリーさを感じ、感銘を受けました。

レーモン・ルーセル / ロクス・ソルス
 駄洒落や言葉遊びから凄まじくシュールで狂気溢れる想像上の発明品がボコボコと生み出されていく様が壮絶です。

菊地成孔+大谷能生 / M/D
 エレクトリックマイルス期のテープ編集やポリリズム解析が圧巻でした。こういった分析はもっと読みたいです。

 山形孝夫 / 砂漠の修道院
 池上彰がエジプト革命についてラジオに出てコメントしていた時コプト教徒について質問されたら「うっ」と言葉が詰まって巧く説明出来ずにいた事が印象に残り、
 個人的にコプト教徒についての好奇心が高まっていた時に読みました。
 だからといって僕にコプト教徒について説明を求められても同じ様に「うっ」と言葉が詰まる事になると思いますが…。

トマスによる福音書 / 荒井献
 聖書外典の「トマスによる福音書」がグノーシス主義的視点からどのように書かれたかを緻密に分析した個人的ウルトラ名著。
 でも原始キリスト教に興味の無い人には全然オススメできません!



・音楽以外のベストな出来事
 洪水前にタイ旅行へ行ってレコードをシコタマ買い込んでこれた事。それでミックスCD作った事。








自己紹介
神奈川県在住です。一応ビートメーカーやってます。「やけのはら」さんや「あるぱちかぶと」さんにビート提供したりしてます。
最近はタイ旅行で買って来たレコードオンリーでミックスCD作りました。欲しい方はお声掛け頂ければ郵送します。
http://soundcloud.com/dr-pulse






 
2011年はどんな年?
まだ客観的に見れません。311は911と同じくボディーブローの様に後から効いてくる事になるでしょう。安易にポピュリズムに流される事無く、地に足付けて生きていきたいものです。









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